5月、「あと1ヶ月」のプレッシャーが始まる季節
ゴールデンウィークが終わると、東京の街はいっきに熱を帯びてくる。爽やかだった春の空気が湿気を含みはじめ、半袖で外を歩く人の姿が目立ちはじめる5月中旬。
この時期、ある種の焦りを感じている人がいる。「6月の試験まで、あと1ヶ月しかない」——資格試験を6月に控えた受験生にとって、5月はもっとも気持ちが張り詰める月だ。
連休中に遊んでしまった罪悪感。思うように進まない参考書。スマートフォンを開いてしまう自分への嫌悪感。毎年この時期、試験を前にした人たちの心には同じような焦燥が渦巻く。
今回紹介するのは、そんな「6月試験」を目前に控えた30歳の女性・Aさんの話だ。自習室KAKOIの春日駅前店を選んだ彼女が、どうやって「毎日通う習慣」を手に入れていったのか——その軌跡を追った。
仕事を辞めて、資格に専念することにした
Aさんは現在30歳。直前まで会社員として働いていたが、資格取得に本腰を入れるために退職を決意した。「どうせやるなら、中途半端にしたくなかった」——そう語る彼女の目には、強い意志が宿っていた。
試験の期限は2026年6月。勉強を始めたのはその数ヶ月前のことだ。最初は自宅のリビングで参考書を開いていた。仕事がなくなった分、時間だけはある。そのはずだった。
ところが、現実はそうはならなかった。
会社員時代には「時間さえあれば勉強できる」と思っていた。でも、いざ家にいる時間が増えると、気が散ることの多さに気づかされた。洗い物が目に入る、テレビの音が漏れてくる、スマホの通知が鳴る。
「やろうと思えばいつでもできる」という状況が、逆に行動を遅らせていた。1時間のつもりが30分でやめてしまう日が続いた。
カフェは「逃げ場」ではなかった
気分転換も兼ねて、近所のカフェで勉強するようにもなった。春日・後楽園エリアには個人経営のカフェも多く、雰囲気はいい。でも、すぐに限界がきた。
隣の席の会話が気になる。BGMがうるさい。長時間居座るのが申し訳なくて、コーヒーを何杯もおかわりする。気づけば、集中するより「カフェで勉強している自分」を演じていた。
春日のカフェで勉強しようとしたんですけど、雑音と値段が気になって全然集中できなくて。
30歳・無職・資格試験挑戦中のAさん
カフェに行くたびに交通費とコーヒー代がかかる。集中できたかどうか怪しいのに、お金だけが減っていく。「これを毎日続けるのか」と思うと、気が滅入った。
そしてもうひとつ、Aさんを悩ませていたのがスマホだった。勉強中に通知が来ると、ついそちらに手が伸びてしまう。SNSを開き、ニュースを読み、気づけば20分が過ぎている——そんなことが1日に何度も起きた。
「スマホがなければ集中できるのに」とわかっていながら、手放せない。意志の力だけで習慣を変えるのには、限界があった。
「駅近で、ロッカーがある」それだけでいい
自習室を探したのは、カフェ通いへの疑問が積もった頃のことだ。春日エリアで検索し、たどり着いたのが自習室KAKOIの春日駅前店だった。
Aさんが入会を決めた理由は、シンプルだった。
- 春日駅から徒歩圏内で通いやすい
- ロッカーがあるので荷物を預けられる
- 静かな環境で長時間集中できる
「駅近でロッカーがあること」——この2点が、彼女の最優先条件だった。重い参考書を毎日持ち歩くのは体の負担になる。ロッカーがあれば、テキストを預けておいて身軽に通える。
カフェとの違いは、まずその「静けさ」にある。周囲の会話もBGMもない。自分の呼吸と、ページをめくる音だけが聞こえる空間。Aさんは体験した瞬間、「ここだ」と思ったという。
体験に来たとき、席に座った瞬間から雰囲気が違いました。「ここなら勉強するしかない」って気持ちになれる場所でした。
30歳・無職・資格試験挑戦中のAさん
一点、気になった点として「ウォーターサーバーがない」ことを挙げていたが、それでも入会を即決した。「それ以外の条件がぴったり合っていたので、許容範囲でした」と語る。
「毎日自習室に行く」という、シンプルな誓い
入会後、Aさんが自分に課したルールはひとつだった。「毎日自習室に行く」。それだけだ。
何時間勉強するかは、その日の体調や進み具合で変わっていい。でも「行くこと」だけは義務にした。なぜなら、行けば必ず集中できるとわかったからだ。
自宅では「やる気が出たら始めよう」と思うと、なかなか始められない。でも自習室のデスクに座った瞬間、スイッチが入る。周囲が静かに勉強している環境が、否応なしに自分のモードを切り替えてくれる。
スマホの問題も、自然と解決した。席に座ったら鞄の奥にしまう——それだけで、誘惑はほぼゼロになった。通知の音が聞こえない環境と、「勉強するために来た」という意識が重なって、手が伸びることがなくなっていった。
同じように「家だと集中できない」という悩みを持って入会した利用者は多い。20歳の大学生・Bさん(男性)も、「家にいるとどうしても集中できないから」という理由で、朝6時から自習室に通い始めた一人だ。早起きして開館と同時に席につくことで、1日の勉強の「スタートダッシュ」を習慣にしているという。
場所の力は、思った以上に大きい。環境が行動を変え、行動が習慣になる。Aさんはそのことを、体で実感していった。
6月の試験へ——「今の自分にできる最善」を積み上げる
5月のいま、Aさんは試験まで残り約1ヶ月というフェーズにいる。焦りがないといえば嘘になる。でも、以前とは明らかに違う手応えがある。
「毎日来ている」という事実が、自信になっている。特別なことをしているわけではない。ただ、決めたことを続けている——それだけで、気持ちが安定するようになってきた。
自宅で「やらなければ」と思いながら過ごしていた頃と、今では勉強に向かう気持ちの質が違う。あの頃は「逃げながら勉強している」感じがあった。いまは「来るべき場所に来て、やるべきことをやっている」という感覚がある。
結果はまだわかりません。でも、毎日ここに来られていること自体が、今の自分の答えだと思っています。
30歳・無職・資格試験挑戦中のAさん
資格試験に挑む理由は人それぞれだ。キャリアチェンジのため、収入を上げるため、あるいは自分自身を証明するため。Aさんの場合は、仕事を辞めてまで挑んだ「本気の一択」だった。
そんな彼女が見つけた答えは、実はシンプルだった。「勉強できる環境に、毎日行く」——ただそれだけのことが、意志の力でどうにもならなかった問題を、あっさりと解決してしまった。
5月の蒸し暑い夕方、春日の街を歩いて自習室に向かうAさんの足取りは、どこか軽い。あと1ヶ月。今日も、デスクに座れば始まる。

