9月、試験シーズンの終わりと、次の戦いの始まり
9月の空気は、どこか独特だ。夏の熱気がまだ残りながらも、朝晩には秋めいた風が混じりはじめる。受験生にとっては総仕上げの季節、社会人受験者にとっては「もう一年、どう戦うか」を問い直す時期でもある。
税理士試験の本試験は例年8月。結果を待ちながら、次の科目への準備を静かに始める人も多い。そんな9月の自習室には、静かな緊張感と、新たな目標に向かうエネルギーが同居している。
今回紹介するのは、税理士試験「消費税法」に挑む30代事務職のAさんの話だ。変則的な勤務シフトをこなしながら、「空いた時間や空いている日」を逃さず自習室に足を運ぶという習慣を確立した彼女の実践が、同じ境遇にある多くの人のヒントになると思う。
Aさんのプロフィール:不規則な日常の中の資格挑戦
Aさんは30歳、事務職として働いている。税理士試験の科目合格制度を活用しながら、今年は「消費税法」の突破を目標に掲げている。
彼女の勤務形態は、いわゆる「変則シフト」だ。週によって出勤時間が変わり、早番の週もあれば遅番が続く週もある。連休が取れたかと思えば、突然休日出勤が入ることもある。規則正しい生活リズムを作りにくい環境で、勉強のスケジュール管理は一筋縄ではいかない。
「毎日○時から○時まで勉強する」という固定ルーティンが組めないため、以前は「今日は疲れたから、また明日」と先延ばしにしてしまうことが多かったという。気づけば試験まで数ヶ月しかない、という状況を繰り返していた。
そんなAさんが江戸川橋の自習室KAKOIに入会したのは、今年の夏のことだ。入会の決め手になったのは、意外にもシンプルな理由だった。
他の利用者が集中している点が、いちばん魅力でした。
30歳・事務職 Aさん
自宅でもカフェでも、なかなか「本気モード」に入れなかったAさん。周囲の人が集中して作業している空間に身を置くことで、自分のスイッチも自然に入る、という感覚を初めてKAKOIで体験した。
「毎日決まった時間」より「空いた時間を逃さない」
Aさんが自習室に通い始めてから変わったのは、勉強量そのものよりも「勉強に向かう心理的なハードル」だったと話す。
変則シフトの勤務では、前日になって翌日のスケジュールが決まることも珍しくない。「明日の午前中が空いた」と分かった瞬間に、すぐ「じゃあKAKOIに行こう」と行動できるようになったのが、最大の変化だという。
以前の彼女なら、急に時間が空いても「準備が面倒」「どこで勉強しよう」と迷っているうちに、結局スマートフォンを触って時間が過ぎていた。自習室が「行く場所」として決まっているだけで、そのロスがなくなった。
変則的な生活のため、空いた時間や空いている日に利用しています。それが自分には合っていると思います。
30歳・事務職 Aさん
「毎日決まった時間に通う」という理想を追いかけてきた人ほど、それが崩れたときに自己嫌悪に陥りやすい。しかしAさんは「自分の生活リズムに合わせて使う」という発想に切り替えることで、ストレスなく勉強を継続できるようになった。
税理士試験の消費税法は、理論の暗記量が多く、計算問題も精度を要する。一夜漬けや短期詰め込みではなく、長期間にわたって少しずつ積み上げることが合格への王道とされている科目だ。だからこそ、Aさんのような「空き時間を逃さず通う」スタイルが、この試験と非常に相性がいい。
集中できる環境を選ぶことの意味
Aさんが自習室に決めた理由のひとつに、「他の利用者が集中している」という点があった。これは単なる雰囲気の話ではない。
人間の集中力は、周囲の環境に大きく左右される。カフェで誰かが笑い声を上げれば、その瞬間に思考が途切れる。自宅でテレビの音が聞こえてくれば、意識がそちらに向く。勉強している「つもり」になっても、実際にはほとんど頭に入っていない、という経験は誰にでもあるはずだ。
自習室KAKOIには、目標を持って集まった人たちがいる。資格試験の受験者もいれば、大学の課題に取り組む学生もいる。互いに言葉を交わすわけではないが、「ここでは集中するのが当たり前」という空気が自然と漂っている。
同じKAKOIを利用する26歳会社員のBさん(千石店)も、入会前のアンケートで「周りの話し声と席の確保」を課題に挙げていた。資格取得を今月中の目標に据えているBさんにとっても、静かで確実に座れる環境は譲れない条件だった。目的と環境がぴったりと噛み合う場所を選ぶことが、勉強の質を決定的に変える。
また、別の店舗に通う37歳会社員のCさん(文京シビックセンター前店)は、無料体験を経て入会を決めた。「体験して良かった」という一言が入会理由に書かれていた。実際に足を運んで空気を感じてみることが、自分に合った環境を見極める一番の近道だ。
自習室・カフェ・自宅を比べると
| 場所 | 静かさ | 席の確保 | 長時間集中 | 変則利用のしやすさ |
|---|---|---|---|---|
| 自宅 | △ | ○ | × | ○ |
| カフェ | × | × | × | △ |
| 図書館 | ◎ | △ | △ | ×(開館時間に縛られる) |
| KAKOI | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
変則シフトで働く人にとって「開館時間に縛られない」「予約不要で使える」という要素は、想像以上に大きい。図書館は静かでも、早朝や夜間は使えない。カフェは席が空いているかどうかが保証されない。自習室の価値は、こうした比較をしてみると際立って見えてくる。
9月の今、積み上げたものが試される
8月の本試験を終えた今、税理士試験の受験者たちは次のステージに向かっている。合格発表は冬。結果を待ちながら次の科目の準備を始める人もいれば、今年の手応えを信じて復習を続ける人もいる。
Aさんは今も、空いた時間に江戸川橋の自習室に足を向けている。試験の手応えがどうであれ、「勉強を習慣として続けられている」という事実が、何より自分への自信になっていると彼女は言う。
結果に一喜一憂するより、行動を積み重ねる。それが変則シフトという制約の中でたどり着いた、Aさんなりの勉強哲学だ。
「毎日決まった時間に勉強できる人が羨ましい」と思っていた時期もあった。しかし今は、自分のペースで、自分のタイミングで通えることに、むしろ安心感を覚えているという。焦らず、しかし確実に、消費税法の理論と計算を積み上げていく日々が続いている。
「いつかまとめてやろう」と思っていると、いつまでも始められない。空いた時間に行くと決めてから、勉強が生活の一部になった気がします。
30歳・事務職 Aさん
税理士試験という長い旅は、一日一日の積み重ねで進んでいく。完璧なスケジュールが組めなくても、環境さえ整えれば人は動ける。Aさんの話は、変則勤務に悩む社会人受験者に、そのことをやさしく教えてくれている。

