9月、受験生にとって「本番」が始まる季節
9月に入ると、夏の残熱がまだ肌にまとわりつきながらも、空の青さがどこか引き締まって見える。蝉の声がふと途絶えた朝、電車の窓から見える高校生たちの表情が、夏休み前とは少し違う。
夏期講習が終わり、文化祭の準備が始まり、センター試験まであと5ヶ月を切る——。受験生にとって9月は、「まだ余裕がある」という気持ちが音を立てて崩れ始める季節でもある。
この時期に多くの受験生が直面するのが、「家にいると勉強できない」という壁だ。参考書は開いている。やる気がないわけでもない。それでも気づけばスマホを触り、ゲームのコントローラーに手が伸び、テレビの音に意識を持っていかれる。
今回話を聞いたのは、巣鴨エリアに住む18歳の男性Aさん。受験本番まで約1年というタイミングで自習室KAKOIの扉を叩いた、そのリアルな決断の記録だ。
「家での勉強は、もう限界だった」
Aさんの部屋には、受験勉強の敵が揃っていた。ゲーム機、漫画、そしてリビングから漏れてくるテレビの音。どれも「少しだけ」のつもりで手を伸ばすと、気づけば1時間が消えている。
「テレビの音って、意外と集中を削ぐんですよね。自分の部屋でイヤホンをしていても、なんとなく気になってしまって。ドア越しに家族の話し声が聞こえると、そっちに意識が向いてしまう」
Aさんは大学受験を目標に掲げ、一年間での合格を狙っていた。志望校のレベルを考えると、夏以降は毎日安定した勉強時間を確保しなければならない。しかし、自宅ではどうしても集中が続かない。
図書館は席の確保が難しく、開館時間にも制限がある。カフェは周囲の話し声が気になるうえ、長居するには注文を重ねる必要がある。「自分の部屋でもなく、カフェでもない、ちゃんとした場所」を探して、Aさんはインターネットで「巣鴨 自習室」と検索した。
高校生も使える自習室を探していました。大学受験、一年間——本気で取り組める場所がほしかった。
18歳・男性受験生 Aさん
検索結果に表示されたのが、巣鴨駅前のKAKOIだった。「高校生も使えるか」が最初の心配だったという。自習室というと、社会人や大学生向けのイメージがあった。しかし、サイトを見ると高校生の利用も明記されており、まず無料体験を試してみることにした。
9月6日、体験当日に感じた「ここだ」という感覚
Aさんが無料体験を訪れたのは9月6日のこと。夏休みが明け、学校が再開した最初の週末だった。
入室すると、まず「静けさ」が際立った。外の喧騒が嘘のように、室内は深い静寂に包まれている。隣の席との間にはパーテーションがあり、視線を感じることなく自分のペースで机に向かえる。
Aさんが気にしていたのは「他の話し声」だった。自宅でも、カフェでも、常に誰かの声が耳に入ってきた。しかしKAKOIの室内は、利用者がそれぞれ黙々と手を動かしている。声は聞こえない。視界に余計なものも入ってこない。
「体験の2〜3時間、集中が途切れなかったんです。これが普通の状態なんだって、少し感動しました。家では30分でもしんどかったのに」とAさんは振り返る。
その日のうちに、月額契約を前向きに検討することを決めた。「無料体験の後に決める」と答えていたAさんだったが、体験後の迷いは短かった。
自習室が「日常」になるまで
KAKOIを使い始めてから、Aさんの一日の構造が変わった。学校が終わったら巣鴨駅前のKAKOIへ直行する。ゲーム機のある自室には戻らない。それだけで、無駄に時間が溶けることがなくなった。
以前は帰宅後にダラダラと過ごして気づけば夜11時、という日も珍しくなかった。しかし今は、KAKOIに来ると自動的に「勉強モード」のスイッチが入る。周囲の人たちが静かに集中している空間が、自分の姿勢にも影響する。
Aさんが注目したのは、同じ時間帯に来ている他の利用者の多様さだ。同世代の学生だけでなく、社会人と思しき人々も黙々と参考書や書類に向き合っている。「自分だけじゃない」という感覚が、孤独になりがちな受験勉強に不思議な安心感を与えてくれた。
同じ巣鴨駅前店を利用する別の受験生、17歳の女性Bさんも似たような経緯でKAKOIを選んでいる。Bさんが最大の敵として挙げていたのは「スマートフォン」。自宅では通知が来るたびに手が止まり、気づくと1時間以上SNSを眺めていることがあったという。
自習室に来ると、スマホをカバンにしまおうという気になる。周りが集中しているから、自分だけ画面を見ていられない。
17歳・女性受験生 Bさん
Bさんは大学入試の2月に向けて、朝の時間帯からKAKOIに通い始めた。「自習室」と検索してたどり着いたという経緯も、Aさんと重なる。同じ悩みを持つ受験生が、同じ場所に集まっているのは偶然ではないだろう。
9月から始める受験生へ、Aさんが伝えたいこと
Aさんは今、受験本番に向けた追い込みの時期に向けてペースを上げている。夏を越えて秋に入ると、模試の結果が現実として突きつけられる。「まだ時間がある」という言葉が通用しなくなる季節でもある。
それでも、Aさんの表情には9月初旬よりも落ち着きがある。なぜなら、毎日の「勉強できる場所」が確保されているからだ。環境が整っていると、気持ちの焦りの質が変わる。闇雲な焦りではなく、「今日ここで何をやるか」という前向きな集中へと変換されていく。
Aさんが自習室を選んで気づいたのは、「意志力だけで誘惑に勝つのは難しい」という、ある意味シンプルな事実だった。ゲーム機が目の前にある部屋で勉強し続けるのは、精神力の問題ではなく、環境設計の問題だ。
自宅に「勉強を邪魔するもの」がある限り、それらと戦いながら集中しようとするのは消耗戦でしかない。それならば、そもそも誘惑のない場所に物理的に移動してしまうほうが、ずっと効率がいい。
勉強できないのは、やる気がないからじゃない。環境がそうさせているだけかもしれない——Aさんの体験は、そのことを静かに教えてくれる。
9月。受験の山場はまだ先だが、今ここで「集中できる場所」を手に入れることが、来春の結果を大きく左右する。Aさんはそのことを、自分の体で証明しようとしている。

