5月の日差しと、静かにならない頭の中
五月晴れという言葉がある。空気が澄んで青空が広がる、一年でもっとも爽やかな季節だ。ゴールデンウィークが明けると、学生は新しい学校生活のリズムに慣れ始め、社会人は年度替わりの慌ただしさがようやく落ち着く。
だがその清々しい空気の中でも、「このままでいいのか」という焦りを抱えている人は少なくない。会社員として20年以上キャリアを積みながら、それでも「手に職をつけたい」「資格を取って人生を変えたい」と思い続けている人が。
今回紹介するAさんも、そのひとりだ。現在49歳、会社員。目標は税理士試験の合格、期限は5年。田端に住み、巣鴨まで通う。夢を語る声は静かだが、意志は固い。
「税理士」という5年越しの目標
税理士試験は、一度で全科目を合格する必要がない。5科目の合格を積み上げていく「科目合格制」を採用しており、働きながらでも挑戦しやすい試験として知られている。それでも、合格率は各科目10〜20%前後。決して簡単な道ではない。
Aさんがこの試験を目指すようになった経緯は、アンケートには詳しく書かれていない。ただ「5年」という期限を自分に課していることが、その覚悟を物語っている。会社員として日々の業務をこなしながら、限られた時間を削って勉強する。そういう生活を、Aさんはすでに始めていた。
問題は、「どこで勉強するか」だった。
音が、すべてを壊す
Aさんが自習室KAKOIを知ったのは、2026年5月。無料体験を申し込む前の段階で、彼が「痛点(pain-point)」として挙げていたのはシンプルに「音」の一言だった。
音が気になって、集中できないんです。
Aさん・49歳会社員(税理士試験受験中)
税理士試験の勉強は、条文の読み込みや計算問題の反復など、高い集中力を要求される作業が多い。ちょっとした物音、誰かの話し声、スマートフォンの通知音――そういったノイズが積み重なると、思考の流れが途切れる。再び集中状態に戻るまでに、また時間がかかる。
Aさんはすでに自衛策としてノイズキャンセル機能付きイヤフォンを持参している。それほどまでに「音」の問題に向き合ってきた人だということが、この準備からうかがえる。
カフェは論外だった。BGMと周囲の会話が常に流れ、電卓を叩く場所でもない。図書館は静かだが、計算ツールを使えないことが多い。Aさんが求めていたのは「自習室」という環境そのものだった。それが、KAKOIを探し始めた理由だ。
無料体験で確かめた「静けさ」と「電卓の音」
Aさんは5月9日、まず無料体験でKAKOI巣鴨駅前店を訪れた。入会を即決せず、「無料体験の後に決める」というスタンスだったのは、慎重に環境を見極めたいという姿勢の表れだろう。
彼が体験時に持参したのは、電卓とノイズキャンセルイヤフォン。税理士試験では電卓操作が不可欠であり、「電卓を使えるかどうか」は自習室選びの重大な条件になる。その点もあらかじめ確認済みだった(KAKOIは電卓の使用が可能)。
体験を終えたAさんが何を感じたか、その詳細は語られていない。だが彼が「自習室」という環境に強く魅力を感じていたことは間違いなく、KAKOIを選んだ決め手のひとつも「自習室であること」そのものだった。
働く社会人が、平日の夜や休日の限られた時間を使って試験に挑む。そのとき何より必要なのは、余計なことを考えなくて済む空間だ。「ここなら集中できる」という確信があれば、勉強机に向かうハードルがぐっと下がる。
同じ悩みを抱える人たちが、ここに来る
Aさんのような「音」の悩みは、決して珍しくない。KAKOIには、同じ課題を抱えて門を叩いた利用者が少なくない。
たとえば春日駅前店を体験した30代の会社員Bさんは、司法試験という難関を翌年に控えながら「自宅に息子がいて集中できない」「早朝に使えるカフェがない」という状況に追い込まれていた。幼い子どもと同居しながら最難関試験を目指す――その切実さは、想像するだけで胸が痛い。
息子が邪魔しにくる。早朝に空いているカフェがない。
Bさん・30代会社員(司法試験受験中)
Bさんが自習室に求めたのも、まったく同じ「静かで、邪魔されない場所」だった。自宅でも、カフェでも得られなかったその環境を、Bさんは自習室に見出した。
また文京シビックセンター前店には、30歳の配達員Cさんが入会している。「図書館が閉まっている時間に、毎日8時間平均で勉強したい」という目標を掲げ、自宅近くのKAKOIを選んだ。資格試験の勉強に向けて、長時間の集中環境を確保しようとしている。
職業も年齢も目標も違う。だが彼らには共通点がある。それは、「自分に合った勉強環境を、自分で整えようとしている」という姿勢だ。
- 自宅では集中できない
- カフェでは音や視線が気になる
- 図書館は開館時間に制限がある
- 電卓など道具を使いたい場面がある
こうした「どこにも当てはまらない」悩みを持つ社会人や受験生が、選択肢として辿り着く場所のひとつが、専用の自習室なのだ。
5年後の自分へ向けて、今日も机に向かう
Aさんの5年計画を、もう少し想像してみたい。税理士試験の受験資格を満たし、5科目の合格を積み上げていくとすれば、今年度からカウントしておよそ2030年ごろに合格証書を手にする計算になる。
その頃Aさんは54歳だ。「40代・50代での資格取得」は無謀に見えることもある。だが税理士として独立・開業したり、税務部門でのキャリアを拓いたりする道は、50代でも十分に開かれている。むしろ、長年の実務経験があるからこそ活きる資格でもある。
Aさんが今選んでいる環境は、そんな長期戦を支えるためのものだ。1回の勉強で劇的な変化はなくても、静かな席で電卓を叩き続けた時間は、確実に積み上がっていく。ノイズキャンセルイヤフォンと手元の問題集、それだけに集中できる時間が、週に何度かでも確保されれば、1年後には確実に前へ進んでいる。
5月という季節は、始まりの季節でもある。新年度のバタバタが落ち着き、長い夏に向けて勉強のペースを組み立て直すタイミングでもある。Aさんが無料体験を申し込んだのが5月9日だったのは、偶然ではないかもしれない。「よし、ここから本格的に始めよう」という気持ちが、その日の行動を後押ししたのではないだろうか。
どんな大きな目標も、最初の一歩は「今日、机に向かえたかどうか」だ。Aさんはその一歩を、自分に合う場所で踏み出した。
環境を整えることは、サボりではない。集中するための準備であり、長期戦を戦い抜くための戦略だ。Aさんの5年後が、どんな景色になっているか――それを楽しみにしながら、今日もKAKOIの席では、誰かの静かな挑戦が続いている。

