7月、受験生にとっての「分岐点」
梅雨が明け、じりじりとした夏の日差しが街を染め始める7月。高校3年生や浪人生にとって、この時期は受験の天王山とも呼ばれる。模試の結果が現実を突きつけ、「このまま家で勉強を続けていていいのか」と問い直す瞬間でもある。
冷房の効いた部屋でテキストを広げる。最初の30分はなんとか集中できる。でも、気づけばスマホを手に取り、SNSを流し見している。ベッドは「ちょっと横になるだけ」のつもりが、気づいたら2時間が経っていた——そんな経験のある受験生は少なくないはずだ。
千石自習室を利用していた浪人生のAさん(19歳)も、かつてまったく同じ悩みを抱えていた一人だった。彼が自習室に通い始め、そして早稲田大学の合格通知を手にするまでの軌跡を追った。
家での勉強が、どうしても続かなかった
Aさんが浪人生活をスタートしたのは、大学受験に失敗した春のことだった。「今年こそは」という強い気持ちを胸に、自宅で勉強を始めた。参考書を積み上げ、計画表を作り、意気込みだけは十分だった。
しかし、現実はすぐに壁にぶつかった。自室に引きこもって机に向かっていても、気がつくとスマホをいじっている。SNSを「5分だけ」見るつもりが、30分以上経っていることがざらにある。
ベッドもまずかった。疲れたときに「10分だけ」と横になると、次に目が覚めたのは夕方という日が続いた。家族が夕食の準備をする生活音や、テレビの音が部屋に流れ込んでくる夜は、集中の糸がぷつりと切れてしまう。
スマホ・SNSの誘惑、ベッドの誘惑(寝てしまう)、家族の生活音・話し声、カフェの混雑・席取り。全部が邪魔をしてくる感じでした。
19歳・浪人生 Aさん
カフェに逃げ込んだこともある。だが、夏の繁忙期は席が埋まっていることも多く、ようやく座れてもドリンク1杯で何時間も粘るのは居心地が悪い。長時間の勉強場所としては、根本的に向いていなかった。
6月を過ぎても、1日に確保できる実質的な勉強時間は4〜5時間程度。夏の模試で志望校の判定がふるわず、Aさんはついに「自分は家では勉強できない人間だ」という事実を、正面から受け入れることにした。
自習室という選択肢に、たどり着くまで
自習室を探し始めたAさんが重視したのは、いくつかの条件だった。
- 家から近く、通いやすい立地
- 年中無休で使える(試験前に急に閉まっては困る)
- 静かに集中できる環境
- 席や椅子が長時間座っても疲れないこと
- 料金が高すぎないこと
予備校の自習室も選択肢にあった。しかし、開館時間が限られていたり、在籍生しか使えなかったりと、条件に合わないところが多かった。いくつかの自習室を調べるなかで、千石自習室が視界に入った。
年中無休。静かそうな環境。席や椅子へのこだわり。比較的リーズナブルな料金体系。条件がひとつひとつ噛み合った。まず無料体験で実際に訪れてみると、半個室のブースに座った瞬間から「ここなら集中できる」という感覚が体に染み込んできた。
入会を決めたのは、体験から数日後のことだった。
1日10〜12時間、夏の自習室に通い続けた
自習室に通い始めてから、Aさんの生活は一変した。朝、自習室に着いたらすぐにブースに座る。スマホはカバンの奥にしまう。周囲の人も静かに勉強している——その空気だけで、「自分もやらなければ」というスイッチが自然に入るようになった。
Aさんが取り入れたのがポモドーロ法だ。アナログの時計を手元に置き、25分集中・5分休憩のサイクルを繰り返す。「タイマーをセットすると、その25分だけは絶対に集中する、という気持ちになれるんです」と彼は言う。
加えて、スタディプラスで毎日の勉強記録をつけた。科目ごとの学習時間が積み上がっていく様子が可視化されることで、「今日も積み上げた」という充実感が生まれ、翌日のモチベーションにつながった。
時計でポモドーロ法を使って効率よく勉強する。スタディプラスで勉強記録をつけて毎日振り返る。この2つをやるだけで、勉強の質が全然変わりました。
19歳・浪人生 Aさん
自習室に通い始めてから、1日あたりの勉強時間は3時間以上増えた。家にいたころの4〜5時間から、自習室では1日10〜12時間を安定して確保できるようになった。夏の猛暑日でも、台風が近づく日でも、Aさんは自習室のブースに座り続けた。
同じ自習室には、似たような境遇の利用者もいた。本郷三丁目駅前店を使う34歳会社員のBさんは、公認会計士試験の合格を目指して1年計画で通い始めた一人だ。社会人として働きながら毎日通うBさんの姿は、浪人生のAさんにとって「自分も負けていられない」という刺激にもなっていた。受験生だけでなく、それぞれの目標を持った人たちが黙々と向き合っている自習室の空気は、Aさんの夏を下支えしていた。
合格通知と、後輩へのメッセージ
12月、Aさんに早稲田大学の合格通知が届いた。第一志望の結果を待つ前に、滑り止めではなく確かな志望校から手にした合格だった。
「合格が出て、とりあえず安心しました」——Aさんはそう振り返る。長かった浪人の夏から秋、冬へと続いた勉強の日々が、ひとつの形になった瞬間だった。
最終的に学習院大学文学部にも合格し、進路を決めたAさんが今の受験生に伝えたい言葉は、シンプルだ。
自分は家でできないとわかっているのなら、絶対に環境を変えるべき。1ヶ月分の料金とそれで増える勉強時間を考えたら、すごくコスパはいいと思った。
19歳・浪人生 Aさん(早稲田大学・学習院大学合格)
「家で集中できない」という事実は、意志の弱さではない。環境の問題だ。スマホがあれば触るし、ベッドがあれば横になる。それは人間として自然な反応に過ぎない。
Aさんが気づいたのは、「自分を変えようとするより、環境を変えるほうが圧倒的に早い」ということだった。7月、受験の天王山を迎えようとしている今、その選択をするかどうかが、秋以降の勉強量を大きく左右するかもしれない。
夏の自習室には、同じ悩みを抱えてドアを開けた人たちが、今日も黙々と机に向かっている。

