夏が来るたびに、「今年こそ」と思っていた
8月。蝉の声が響き、夕立が来るたびに少し涼しさを取り戻す、あの短い夏。気づけば社会人になって10年以上が経ち、毎年この季節になると「今年こそ資格を取ろう」と手帳にメモしては、結局ページが白いまま9月を迎える——そんな繰り返しに心当たりのある方は少なくないはずだ。
受験生にとっては天王山とも呼ばれる8月。夏期講習や模試に追われる10代の隣で、社会人にも同じように「夏こそ本腰を入れたい」という焦りが生まれる季節でもある。仕事は続く。でも時間は有限で、帰宅後の自分は思った以上に意志が弱い。
今回紹介するのは、そんな「毎年やろうとしていた」から「ついに合格した」へと変わった35歳会社員・Aさんの話だ。千駄木に住み、本郷三丁目の自習室KAKOIを使い始めたAさんは、今年の6月末に目標としていた資格試験を合格して通過点を越えた。その軌跡をたどっていきたい。
「帰宅したら終わり」だった毎日
Aさんが自習室KAKOIの無料体験に訪れたのは、今年のゴールデンウィーク、5月5日のことだった。目標は「6月末の資格試験合格」。期限まで2ヶ月を切ったタイミングで、Aさんはある種の危機感を持ってKAKOIの扉を叩いた。
それまでの勉強環境は、専ら自宅だった。仕事を終えて帰宅し、夕食を済ませてから参考書を開く——頭ではそう描いていた。だが現実は違った。ソファに座ればテレビのリモコンが手に届く場所にある。本棚には読みかけのマンガが並んでいる。スマートフォンには通知が届き続ける。
テレビやマンガなど誘惑が多くて、家では全然集中できないんです。「30分だけ」のつもりがいつの間にか2時間経っていて、気づいたら日付が変わっていることも。
35歳・会社員 Aさん
誘惑があること自体は悪いことではない。自宅はリラックスするための空間だから、当然そうなる。問題は、勉強したい自分と休みたい自分が同じ空間に同居している点だ。意志の力でどうにかしようとすること自体に、Aさんはすでに限界を感じ始めていた。
カフェも試した。近所のチェーン店で参考書を広げてみたが、BGMと隣のテーブルの会話が気になって、問題を解くどころではない。長時間の滞在も気が引けて、コーヒー1杯で1時間が限界だった。
「資格勉強 文京区」で検索して見つけた場所
転機は、ふとしたスマートフォンの検索だった。「資格勉強 文京区」と打ち込んで出てきたのが、自習室KAKOIの本郷三丁目駅前店だった。千駄木から本郷三丁目は電車でひと駅。通勤経路とはやや異なるが、自宅から無理なく通えるアクセスの良さが目に留まった。
「とりあえず試してみよう」という感覚で、GWの無料体験を予約した。ゴールデンウィーク中ということもあり、世間が浮き足立っている中でKAKOIを訪ねたAさんが見たのは、静かに自分の勉強に向き合う人たちの姿だった。
席に座り、参考書を開くと、周囲の空気が自然と「ここは勉強する場所だ」と体に教えてくれた。隣の人も、前の席の人も、みなモノに向き合っている。テレビはない。マンガはない。スマートフォンをいじっている人もいない。Aさんは、自分が今まで求めていたのがこの環境だったと、体験中に気づいたという。
周りが集中しているから、自分もやるしかないというか——「勉強モード」のスイッチが自動で入る感じがしました。意志力に頼らなくていい、というのが一番大きかったかもしれません。
35歳・会社員 Aさん
その日の無料体験が終わった後、Aさんは入会を決めた。6月末の試験まで残り2ヶ月を切っていた。迷っている時間はなかった。
入会してから変わったこと、続けられた理由
Aさんが選んだプランは、全店舗を使える自由席プラン。仕事の都合で帰宅時間が変わる日もあるため、「その日の気分や帰り道に合わせて店舗を選べる」柔軟さが決め手だった。
入会してから、Aさんの平日のリズムがガラッと変わった。それまでは「帰宅→ダラダラ→気づけば深夜」だったのが、「退社→KAKOIへ直行→1〜2時間集中→帰宅→就寝」というサイクルに切り替わった。帰宅してしまうと誘惑に負けるとわかっていたから、仕事帰りに自習室へ寄ることをルーティン化したのだ。
週の利用回数は平均4〜5回。1回あたりの滞在は1.5〜2時間程度。土日は午前中に来て3時間ほど腰を据えることもあった。トータルで1週間あたり8〜10時間の勉強時間を確保できるようになった。以前の自宅学習では週2〜3時間がせいぜいだったことを思えば、実質3倍以上の勉強量だった。
KAKOIで集中できる理由について、Aさんはいくつかの点を挙げてくれた。
- 半個室タイプの席で、左右の視界が遮られているから周囲が気にならない
- 私語厳禁の環境が、「ここは集中する場所」という意識を自然に呼び起こす
- 仕事帰りに立ち寄る動線にあるため、習慣化しやすかった
- 同じ目的を持つ人が集まる空気が、モチベーションの維持を助けてくれる
同じ文京区内で資格勉強に取り組む人は、Aさんだけではない。後楽園駅前店を利用する39歳会社員のBさんは「専門学校の自習室が使えない時間帯に利用し、自宅でサボってしまう時間を減らしたい」と語る。自宅に帰ると勉強できない——この悩みは、働きながら何かを学ぼうとする社会人に共通するものだと気づかされる。
また、巣鴨駅前店を使う62歳会社員のCさんも「空き時間に資格取得の勉強をしたい」という目的で入会している。年齢に関係なく、「環境を変えれば集中できる」という事実は変わらない。
6月末、試験当日のこと。そして今
入会から約2ヶ月が経った6月末、Aさんは目標としていた資格試験に臨んだ。試験当日の朝も、KAKOIで1時間だけ最終確認をしてから会場へ向かったという。
結果は合格。「正直、6月末というのはギリギリの設定だった」とAさんは振り返る。もし5月のGWに体験を申し込んでいなければ、また別の試験日程に先送りしていたかもしれない、とも。
合格後、Aさんは引き続きKAKOIを利用している。次の目標に向けて、すでに新しい参考書を開き始めているからだ。「環境を整えれば、自分でも続けられるとわかった」という自信が、次の挑戦への背中を押している。
意志が弱いから勉強できないんじゃなくて、環境が整っていなかっただけだったんだと思います。場所を変えるだけで、これだけ変わるとは思っていませんでした。
35歳・会社員 Aさん
8月の夏空の下、自習室には今日もさまざまな目標を持つ人が集まってくる。大学受験を控えた10代、仕事の合間に学ぶ30代、定年を前に新たな挑戦をする60代——それぞれのペースで、それぞれの「今年こそ」を実現しようとしている。
「環境を整える」という、たった一つの選択が、長年先送りにしてきた目標を現実に変える。Aさんの体験はそのことを、静かに、しかし力強く証明している。

