梅雨入り前夜、退路を断つ決断
6月に入ると、東京の空は日に日に重くなる。湿度が上がり、夕方には突然のにわか雨が降ることも珍しくない。傘を手放せない季節だ。
この時期、書店の資格コーナーには「税理士試験」「簿記」「公務員試験」のテキストが並び始める。8月の税理士試験本試験まで残り2ヶ月を切るこの時期は、受験者にとって追い込みの季節でもある。
そんな6月の入り口に、一つの大きな決断をした人がいる。32歳のAさん——つい先日まで会社員だった彼は、退職届を出し、税理士試験の勉強に専念することを選んだ。
「中途半端に働きながらでは、絶対に合格できないと思いました。やるなら本気で、と決めました」
退路を断つ覚悟を持った彼が、自習室KAKOIの春日駅前店の扉を叩いた。
「2027年に3科目、2028年に全科目合格」という目標
Aさんが税理士を目指したのは、長年の思いがあってのことだ。会社員として働きながら、ずっと「いつかは独立したい」「専門的なスキルで食べていきたい」という気持ちを抱えていた。
税理士試験は、5科目合格が必要な難関国家資格だ。一科目ずつ受験でき、合格科目は無期限で有効というスタイルから、社会人が数年かけて取得するケースも多い。しかし、仕事と勉強を両立する難しさを身をもって感じてきたAさんは、「片手間では無理だ」という結論に至った。
Aさんが掲げた目標はこうだ。
- 2027年の試験で3科目合格
- 2028年の試験で残り全科目合格
2年間で5科目を取り切るという計画は、税理士受験界では決して楽な道ではない。予備校講師でさえ「5科目全合格に平均10年以上かかる」と口にすることがある試験だ。
それでもAさんは、専念すること——すなわち毎日、長時間、質の高い学習を積み重ねることで、この目標を達成できると信じていた。そのためにまず必要だったのは、「毎日通える、集中できる場所」だった。
自宅でもカフェでもなく——「人の気配」という悩み
退職後、最初の数日間はAさんも自宅で勉強しようとした。テキストを開き、電卓を用意し、問題集に向かう。しかし、すぐに限界を感じた。
自宅は、集中するには刺激が多すぎた。スマートフォンの通知、テレビの誘惑、冷蔵庫の音——そういった「モノ」の問題もあったが、Aさんが最も苦しめられたのは別のことだった。
一番つらかったのは「人の気配」なんです。家に誰かいると、それだけで意識が分散してしまう。かといってカフェは混雑していて、話し声や人の動きが気になってしまう。
32歳・元会社員 Aさん
「人の気配」という表現は、ユニークに聞こえるかもしれない。しかし税理士試験の勉強は、計算問題や理論問題を長時間にわたって深く考え続ける作業だ。隣で誰かが話していたり、背後で人が動いていたりするだけで、思考の糸が切れてしまう。
かといって完全に一人きりの空間だと、今度は緊張感がなくなってしまう。「誰かがいる、でも邪魔されない」という絶妙な環境が必要だった。
そこでAさんが検索したのが、有料の自習室だった。「自習室」「安全」「女性も使う」という安心感のある環境を求めてたどり着いたのが、自習室KAKOIの春日駅前店だった。
無料体験で確かめた「自分に合う静けさ」
Aさんが無料体験を訪れたのは5月末のこと。梅雨の足音が近づき始めた頃だ。春日駅から数分歩いてKAKOIに入ると、まず「静かさ」が出迎えた。
半個室タイプの席はパーテーションで仕切られており、隣の利用者の動きが視界に入りにくい構造になっている。人はいるのに、気配が薄い。Aさんが探していたのは、まさにこの感覚だった。
体験した瞬間に「ここだ」と思いました。人がいるのに気にならない。電卓を叩いても浮かない雰囲気がある。税理士受験生として長く通える場所だと感じました。
32歳・元会社員 Aさん
税理士試験の勉強には電卓が欠かせない。計算問題の演習では、電卓をリズムよく打つ音が自然と出る。カフェや図書館では周囲への遠慮が生まれるが、KAKOIは電卓利用を想定した環境だ。「電卓を気兼ねなく使える」という点も、Aさんにとって大きな加点ポイントだった。
体験後、Aさんは月額プランへの入会を決めた。「これだけ専念するなら、月単位で通える場所が必要だった」と振り返る。
「専念」を支える、日々の勉強ルーティン
入会後、Aさんの1日は自習室を中心に回り始めた。起床後に軽く食事を済ませ、開店と同時にKAKOIへ。午前中は理論の暗記に充て、午後は計算問題の演習をこなす。夕方に一度帰宅し、夜はテキストの復習で締める——そんなサイクルを作り上げた。
自宅学習と組み合わせながら、KAKOIでは「深い集中が必要な作業」を行うようにしている。問題を解き、答え合わせをし、間違えたところをノートに整理する。インデックスを使って参照ページをすぐ開けるよう工夫したテキストは、使い込むごとに付箋だらけになっていく。
6月は税理士試験の本試験まで2ヶ月を切るタイミングだ。受験勉強において、この時期の過ごし方は合否を大きく左右する。Aさんは「今が一番大切な時期」と感じながら、毎日席に着き続けている。
同じ自習室には、さまざまな目標を持つ利用者が集まっている。たとえば25歳の公務員のBさんは、「日商簿記2級を1ヶ月以内に合格したい」とスポット利用で訪れた。電卓を手に集中する姿は、Aさんと目標は違えど、真剣さという点では同じだ。
「周りも勉強している、という事実がモチベーションになる」とAさんは言う。孤独になりがちな浪人・退職後の勉強生活において、同じ空間に「仲間ではないけど同志」がいる感覚は、予想以上に大きな支えになった。
- 「人の気配」を感じにくい半個室構造
- 電卓を気兼ねなく使える環境
- 安心・安全な雰囲気(女性利用者も多い)
- 月額プランで毎日通える
退路を断った先にある景色へ
「仕事を辞めて勉強に専念する」という選択は、誰もが背中を押してくれるわけではない。家族や友人から心配の声が上がることもある。「本当に合格できるのか」という不安は、勉強を始めてからも消えるものではない。
それでもAさんは、毎朝KAKOIに向かい続けている。梅雨の雨に濡れながら春日駅の改札を出て、自習室の扉を開ける。その繰り返しが、やがて合格という形になる——そう信じているから。
「2年で5科目」という目標は、傍から見れば無謀に映るかもしれない。しかしAさんにとって、それは「中途半端にやらない」という決意の表れだ。税理士試験に限らず、何かに本気で向き合うとき、環境を整えることは戦略の一つになる。
どこで勉強するか。それは、どう自分と向き合うかという問いでもある。Aさんが春日駅前のKAKOIで見つけたのは、単なる「静かな席」ではなく、本気の自分でいられる場所だったのかもしれない。

